不具合事例とQ&A

  • 設計

    シーリング材表面の波打ち

    平滑に仕上げたシーリング材の表面に、2〜3日経過して波打ち(シワ)が発生する現象です。


    変形状態Ⅰ

    変形状態Ⅱ

    写真のような「シワ」がシーリング材表層部に施工後数日でできたのは、シーリング材の硬化途上で目地に発生した大きなムーブメントの影響によるものと考えられます。
    ムーブメントが大きな目地には2成分形シーリング材が使用されますが、シーリング材が弾性を発現するまでには通常数日間を要します。その間に、日射や気温変化による部材の熱伸縮によって目地に動きが生じ、次の①②のような条件が整うとシワが発生しやすくなります。


    シワ発生のメカニズム

    ①充填後、4〜8時間の時間帯に目地に大きなムーブメントが発生する。
    ②硬化途上に、圧縮方向のムーブメントが発生する。

    事前対策

    目地の幅及び深さと発生ムーブメント並びに硬化時の挙動が関係します。
    ・目地幅はJASS 8(防水工事)での検討結果よりも余裕のある目地幅で設定します。
    ・目地深さは許容範囲で浅め(薄め)に設定します。
    ・目地のムーブメントはパネルの長さ・温度差・色調やパネル取付け部材の拘束度合いなどにより変化します。また、施工する面(方位)によって日照時間帯も変わるので、施工のタイミングなども事前に考慮します。
    ・足場+ネット張りなどで、日射による温度変化を低減させることができます。
    ・硬化促進剤の添加により、半硬化状態の変形しやすい時間帯を短くします。

    事後対策

    目地幅やパネルの長さなどが既に変更できない状況で発生した場合は、シーリング施工での対応を検討して下さい。
    ・目地深さは許容範囲で、浅め(薄め)に設定します。
    ・パネルが取り付けてある方位や日射時間帯などを考慮し、直接日射を受けず温度変化の少ない時間帯に施工を行います。(東面=午後施工、西面=夕方~夜間施工など)
    ・硬化促進剤を使用し、ムーブメントが発生する前に硬化させ、シワの発生を防止します。

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  • 設計

    ワーキングジョイントの3面接着によるはく離

    外装アルミパネル目地のシーリング材が短期間(1年未満)ではく離した事例です。シーリング材を撤去してみると、目地底にマスキングテープが張られていることが判明しました。


    はく離状況Ⅰ

    はく離状況Ⅱ

    目地に動きが生じるワーキングジョイントでは、シーリング材が動きに追従できるようにシーリング材の2面接着が必要となります。3面接着にした場合、目地底面にも接着して動きに追従できず、短期間で接着破壊や破断等の不具合が発生します。2面接着にさせるため、目地底にはシーリング材と接着しないバックアップ材やボンドブレーカーを用います。


    はく離発生のメカニズム

    不具合事例は,ボンドブレーカーの代わりにマスキングテーププを使用し、マスキングテープにシーリング材が接着したため3面接着状態となり、シーリング材にはく離が発生したものです。

    事前対策

    ・金属パネル目地などのワーキングジョイントは2面接着が基本です。
    ・2面接着にはバックアップ材もしくはボンドブレーカーが必要です。
      1)目地深さが十分な場合・・・バックアップ材装填
      2)目地深さが浅い場合・・・ボンドブレーカー張り

    ※シーリング材とバックアップ材またはボンドブレーカーの組合せについては、事前に確認を行うか、バックアップ材またはボンドブレーカーがシーリング材用の「ポリエチレン製」であることを確認してから使用して下さい。

    事後対策

    ・既存シーリング材を撤去後、バックアップ材またはボンドブレーカーを装填し、新規シーリング材を充填して下さい。

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  • 設計

    ノンワーキングジョイントの2面接着による漏水

    鉄筋コンクリートの打継ぎ目地付近にクラック(ひび割れ)が生じ、漏水が発生した事例です。


    目地周辺のクラック例Ⅰ

    目地周辺のクラック例Ⅱ

    ・クラック(ひび割れ)から雨水が浸入し、目地底を通り内部に漏水が発生したものです。鉄筋コンクリートのクラック防止は困難なのが現状です。この場合は、シーリング材を3面接着で施工していなかったことが漏水に至った原因といえます。
    ・鉄筋コンクリートの打継ぎ目地は目地棒で成形されることから、目地棒撤去時に目地近辺部に欠損が生じやすく、また、目地棒周辺は ジャンカ(豆板)等の欠陥ができやすいため、目地周辺から雨水が浸入しやすく、更に目地底を介して漏水につながりやすい部位といえます。


    目地際のクラックと2面接着による漏水

    事前対策

    ・鉄筋コンクリートのシーリング目地(打継ぎ目地・亀裂誘発目地・サッシ回り目地等)は3面接着とします。
    ・目地深さが深い場合でも、目地底に接着して施工します。


    目地の納まり

    事後対策

    2面接着で不具合が発生した場合はシーリング材を撤去し同種のシーリング材または打継ぎ接着性に問題のない新規シーリング材で3面接着により施工して下さい。

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  • 設計

    シーリング材のはく離(小口の塗装材はく離)

    塗装仕上げを施した外装材のシーリング材接着界面で、シーリング材に塗装材が付着した状態ではく離した事例です。


    はく離状況Ⅰ

    はく離状況Ⅱ

    はく離発生のメカニズムを図1に示します。
    ・塗装材の塗膜強度が小さく、かつ、目地変形時に発生した引張応力により塗膜が下地からはく離したケース。
    ・プライマーの塗装ムラなどにより、シーリング材中の可塑剤が移行し、塗膜の付着強度が低下。
    ・目地の動きに伴い接着界面に大きな力が発生。


    図1 はく離現象

    事前対策

    ・シーリング材接着面は素地面とし、界面に塗装材が介在しないようにします。
    ・2液形塗料や焼付け塗料など、塗膜強度の高い塗装材を使用します。1液形常温硬化形塗料は塗膜強度が弱いため絶対に避けて下さい。
    ・シーリング材からの可塑剤の染み込みを防ぐため、塗りムラやカスレが発生しないよう、接着面にプライマーを確実に塗布します。
    ・シーリング材は低モジュラスタイプの塗装材に影響を与えにくい種類を選定します。

    事後対策

    ・シーリング材撤去時に界面の脆弱な塗膜層も除去し、素地に直接接着させて下さい。
    ・シーリング材は目地変形時の発生応力が低い低モジュラス品で、かつ塗装材に影響を与えにくいものを使用して下さい。

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  • 設計

    目地幅不足に伴うはく離

    金属パネル目地のシーリング材が2年程ではく離した事例で、はく離したシーリング材を切り取ってみると断面が台形形状を示していたものです。


    シーリング材形状

    パネル目地状況

    見かけの目地幅(表層部)に対し、内部側(目地底側)の目地幅が少ないため、目地幅が不足した場合と同様のムーブメントがシーリング材に作用し、場合によってははく離に至る場合があります。


    不具合の目地断面

    事前対策

    断熱複合塗装鋼板(サンドイッチパネル)や板金等は簡易に加工できるのが利点ですが、現場での加工は目地の断面形状などが不安定になりがちです。
    防水上、重要な目地などは極力工場での加工を前提とするなど、関係者で協議することが有効と考えます。
    また、やむを得す現場で加工などする場合は、目地幅に余裕を持たせるようにして下さい。

    事後対策

    目地形状の修正は容易ではありません。 補修しても目地幅不足が原因ではく離する場合は、シーリング材をより高い耐久性のものに変更するか、ブリッジエ法などを検討する必要があります。
    硬質バックアップ材を使用するなどして、ある程度修正できる場合もありますが、長期的にはバックアップ材が変形し、有効な手段とはなりません。

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