不具合事例とQ&A

  • 材料

    薄層未硬化

    MS2500(2成分形変成シリコーン系)またはIB7000(2成分形ポリイソブチレン系)を目地に充填した場合、全体的には硬化するものの、被着体際の薄い部分だけが未硬化のまま固まらない現象です。石やタイルの落とし目地やガラス回り目地のマスキングテープのちり際、重ね仕上げになるシーリング材そぎ継ぎ部、金属パネルのRエンド部等の厚さ1mm未満の薄層で発生しやすい現象で、シーリング目地際の白化現象・変色・雨だれ汚染・衣服への付着等の不具合につながります。
     

    不具合事例1

    薄層未硬化現象

    MS2500及びIB7000は、硬化剤の存在下で空気中及びシーリング材中の水分によって各樹脂が有する官能基(反応する手)が加水分解反応を開始し、3次元の網目構造を形成して弾性体に変化することで硬化していきます。この硬化機構の中で両者に共通するのが、硬化剤として硬化性だけでなく接着性・物性・耐久性などのバランスを考慮して「特定の有機金属触媒」を選択していることです。仮に、この硬化剤が存在しない場合は、水分がいくら存在してもほとんど硬化しません。
     

    この「特定の有機金属触媒」は非常に不安定な物質で、特定の環境下に置かれると安定な物質(不活性物質)に変化したり揮発する性質を有しています。この環境条件については、一般的に言われている多湿(水分)であることも考えられますが、当社の実験結果や市場での発生実績を見ると、部材温度が約60℃以上になる被着体で発生しやすいと判断されます。すなわち、冬季より春から夏季に発生しやすく、実際の市場でもこの季節の発生率が高くなります。また、シーリング材の厚みがある部分はこの有機金属触媒が多量に存在するのに対し、薄層部分はその分少なくなるため、上記の不活性物質に変化する確率が非常に高くなることが大きな要因と考えられます。
     

    なお、住宅に使用される応力緩和タイプのMS2570(2成分形変成シリコーン系)及びMS2970typeNS(前同)については、触媒系が異なるため薄層未硬化現象は発生しません。

    事前対策

    1)施工面
    ①ガラス、金属パネル目地小口部
    ・マスキングテープを目地際まで張って下さい。
    ②シーリング材の打継ぎ部
    ・先打ちの硬化シーリング材上に見切りのマスキングテープを張って下さい。
    ③マスキングテープ除去後のならしバッカーによる最終仕上工程は、極力避けて下さい。
    ・被着体とシーリング材の間に「専用プライマー」が存在する場合は、この現象がかなり押さえられることを確認しています。
     

    2)材料面
    可使時間は犠牲になりますが、硬化促進剤を投入して施工して下さい。硬化促進剤には同じ特定有機金属触媒が含有されており、触媒失活(触媒の
    活性が失われること)の確率を下げる効果があります。

    事後対策

    基本的な原因は硬化触媒が機能を失うことによる現象であるため、硬化成分を薄膜未硬化部分に補給することが対策となります。そのため、当社では硬化を促進させる成分を含み、紫外線で黄変しない下記のシラン系プライマーを、当該部分に叩くように塗布する補修方法を推奨しています。このプライマーを塗布すると、粘着性が全くないさらっとした表面状態になりますが、艶が消え少し白っぽくなります。そのため、目地周辺の被着体に必ずマスキングテープを張って付着しないようにして下さい。常温下では約半日で未硬化部分は硬化します。
    ・プライマーSS-1(IB7000専用シラン系プライマー)
    ・プライマーSS-2(IB7000専用2液シラン系プライマー)

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  • 材料

    シーリング材の表面タックによる塵埃付着

    シーリング材施工後に残る表面タック(粘着性)により塵埃が付着し、目地表面が黒ずんだりする現象です。シーリング材施工後に行われる外構工事等で発生する塵埃が付着することで多く見られます。
     

    不具合事2

    汚れの付着状況

    シーリング材は、部材の水密性・気密性を確保するための材料です。このため、硬化後の物性としてゴム状の柔軟性を有していることが必要となり、シーリング材には一般的に柔軟性を付与する成分として可塑剤が配合されています。
     

    一方、可塑剤を配合することによりシーリング材の主成分であるポリマーの「架橋密度の低下」や「架橋点間距離の拡大」がもたらされ、一般的なプラスチックや成形ゴムなどの材料に比べ、表面タックが残りやすい傾向にあります。また、この表面タックは、ポリマー由来の分子量・分子間力や硬化後の架橋密度(反応する点の密度)などに起因し、発生度合が異なります。変成シリコーン系(MS2500等)やポリイソブチレン系(IB7000)よりも、シリコーン系(SR2520等)のポリオルガノシロキサンポリマーの方が「分子量が小さい」・「分子間力が低い」・「架橋密度が高い」等の化学構造的な観点から、粘着性は少なくなるといえます。
     

    なお、表面タックは、シーリング材施工後、日数が経つにつれてポリマーの架橋が進むため、少なくなる傾向にあります。しかし、室内では日射による架橋反応の促進効果も少なくなるため、表面タックの消失には時間がかかる傾向があります。

    事前対策

    表面タックの改善手法として、変成シリコーン系及びポリイソブチレン系ともに、架橋密度の高い「光(紫外線)硬化性樹脂」を添加しています。タックは比較的日光が当たりやすい東面・南面・西面の部位では半月程で消失しますが、北面のように比較的日光の当たりにくい場所になると消失するまでに約1〜2ヶ月程かかります。
     

    表面タックの消失は、IB7000に比べMS2500の方が早いことが実験的に判明しています。その理由は、「光(紫外線)硬化性樹脂」のシーリング材表層部への移行がMS2500の方が早いためと考えられます。
     

    なお、室内などの紫外線が比較的少ない箇所の施工については、タック除去に更に効果的な「特殊フッ素樹脂系塗料DSスプレー」を商品化しています。

    事後対策

    市販されている「粉末クレンザー」(研磨剤、界面活性剤を含有)を、水で湿した「スポンジたわし」に付けて物理的に除去し、水洗いします(写真参考)。水や溶剤清掃では、塵埃は膨潤したり拡散するだけで十分な除去効果は発揮できません。
     

    なお、再発防止のためには、この作業後に「特殊フッ素樹脂系塗料DSスプレー」を目地表面にスプレーすることを推奨します。
     

    不具合事例2

    清掃剤等の例

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  • 材料

    2成分形の変成シリコーン系及びポリイソブチレン系の艶むら現象

    硬化後の「艶」の状態は、当該シーリング材充填後の外部環境(温度及び湿度)による影響を受けやすく、一般的に夏季は「艶あり」状態を、冬季は「艶消し」状態を示す傾向があります。ただし、冬季でも湿度が低い場合は、「艶あり」状態を示すことがあります。

    ①「艶消し」のメカニズム
    シーリング材中の硬化助触媒(脂肪族アミン)が表層に移行して析出(結晶化)し、シーリング材表面に凹凸を形成させることで「艶消し」状態を示すと考えられます。
     

    放射冷却現象(地表の温度が下がり、湿度が上昇する)が起きやすい冬季は、シーリング材表面は「艶消し」状態を示すことが多くなります。
     

    ②「艶あり」のメカニズム
    シーリング材中の可塑剤(液体類)が表層に移行することによりシーリング材表面が平滑になり、「艶あり」状態を示すと考えられます。また、温度の高い夏季の場合は、上記の硬化助触媒も伴って表面に移行しますが、冬季のように結晶化せず液体状態を保持したままであるため「艶あり」状態を呈するものと考えられます。

    事前対策

    天候に左右されるため、事前に硬化後の艶について外観を予測することは非常に難しく、決定的な事前対策がないのが現状です。

    事後対策

    表面状態としては艶消し状態の方が目立ちにくいため、次の方法で補修を行います。
    ①乾いた軍手・ウエス等で当該目地の表面をこすり、目あらしをして艶を消します。
    ②プライマーSS-1を塗布して艶を消します。この場合、被着体にはみ出さないように必ずマスキングテープを張り付けてから塗布して下さい。被着体にはみ出ると少し白っぽく艶が消えるため外観が多少異なってきます。
     

    どちらの方法も意匠上の問題であるため、目立たない箇所で事前確認をしてから関係者と協議を行い、補修方法を決定して下さい。

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  • 材料

    成形ゴムとの接触によるシーリング材の変色

    ガラス回りのセッティングブロックまたはグレージングロープなどのガスケットに使用されるクロロプレン(CR)製またはEPDM製の成形ゴムと接触した箇所のシリコーン系シーリング材等が主に茶褐色に変色する現象です。
    ※「ネオプレン」:米国DuPont社のクロロプレンゴムの「商品名」

    不具合事例4

    汚染状況Ⅰ

    不具合事例4

    汚染状況Ⅱ

    上述の成形ゴム製品すべてで発生するとは限りませんが、促進暴露耐候性評価結果でも確認されている変色現象です。ただし、このような変色現象がなぜ発生するかを追究した実験までは行われていません。
     

    成形ゴムは、低温下では結晶性があり、常温では固体で存在します。そのため、製品化に際しては、これらのゴムに相溶性のある可塑剤(軟化剤)を練りこみ、各種老化防止剤(紫外線吸収剤等)等を添加したうえ加硫処理工程を経て成形製品となります。この加硫処理に加硫促進剤が使用され、一般的には「チウラム系(硫黄系)」が多用されています。このチウラム系加硫促進剤や特定の紫外線吸収剤が液体成分とともにシーリング材に浸透・移行し、更に日光(紫外線)にさらされることにより、シーリング材に含まれる何らかの配合剤と反応を起こし、表面が変色していくものと推測されます。

    事前対策

    変色防止対策を次に示します。
    ①直接、成形ゴムとシーリング材を接触させないようにして下さい。成形ゴムとシーリング材との接触界面をボンドブレーカーやバックアップ材(2mm厚以上)等で「縁切り」して下さい。
    ②EPDMゴムは「耐シリコーン性」(EPDM-S)の製品を使用して下さい。
    ③クロロプレンゴムは一般に変色しやすいため使用しないで下さい。
    ④シリコーンゴムや硬質独立発泡ポリエチレン成形物を使用して下さい。
    ⑤事前に適合性を確認して下さい。

    事後対策

    変色したシーリング材目地部分を除去し、上記の対策を施して下さい。

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  • 材料

    2成分形ポリウレタン系の紫外線による黄変

    PU9000typeNB(2成分形ポリウレタン系)が塗装前に直射日光の当たる部分で黄色く変色する現象です。(施工直後は白色だが数日経つと表面が黄色くなる)

    不具合事例5

    表面が黄変したPU9000typeNB

    2成分形ポリウレタン系シーリング材は光による紫外線劣化を受けやすいため、表面に仕上材(塗料)を塗布して保護することを前提としています。塗料が塗布されない露出の状態では、紫外線の影響により配合物の一部が呈色反応を示し、表面が黄色に変色することがあります。トナーを用いないPU9000typeNBは、シーリング材自体が白色であるため、紫外線が強い季節にはこの黄変色が特に目立つことがあります。
     

    なお、この変色による防水機能への影響はありません。

    事前対策

    黄変は、シーリング材表面だけの化学変化であり、シーリング材の防水機能などに影響はありませんので特に対策は必要ありません。
     

    なお、PU9000typeNBは塗装仕様ですが、塗装前の黄変が気になる場合は、養生シートで直射日射を遮るか、あるいはMS2500(2成分形変成シリコーン系)・PS169N(2成分形ポリサルファイド系)・IB7000(2成分形ポリイソブチレン系)共用標準色トナー(グレー系)による着色が黄変防止に有効です。

    事後対策

    黄変は、シーリング材表面だけの化学変化であり、シーリング材の防水機能などには影響しませんので、そのまま塗装して下さい。
     

    なお、シーリング材施工後、長期間(半年以上)放置されると、表面のひび割れや白亜化(チョーキング)等の劣化に発展する可能性があるので、塗装仕上はなるべく早く行って下さい。

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